mtkernel_3

μT-Kernel3.0 RX231 IoT-Engine向け実装仕様書

Version.02.00.00

2023.12.01

目次

1. 概要

1.1. 目的

本書はRX231 IoT-Engine向けのμT-Kernel3.0の実装仕様を記す。 対象は、トロンフォーラムから公開されているμT-Kernel 3.0(V3.00.07)のうち、RX231 IoT-Engine向けの実装部分である。

ハードウェアに依存しない共通の実装仕様は「μT-Kernel3.0共通実装仕様書」を参照、RXv2コアに共通の仕様は「μT-Kernel3.0 RXv2向け実装仕様書」を参照のこと。

以降、単にOSと称する場合はμT-Kenrel3.0を示し、本実装と称する場合、前述のソースコードの実装を示す。

1.2. 対象ハードウェア

実装対象のハードウェアは以下の通りである。

分類 名称 備考
実機 RX231 IoT-Engine UCテクノロジー製
搭載マイコン RX200シリーズ RX231グループ
R5F52318ADFL
ルネサス エレクトロニクス製

1.3. ターゲット名

RX231 IoT-Engineのターゲット名および関連する識別名は以下とする。

分類 名称 対象
ターゲット名 _IOTE_RX231_  
対象システム IOTE_RX231 RX231 IoT-Engine
対象CPUアーキテクチャ CPU_RX231 RX231シリーズ
対象CPUコア CPU_CORE_RXV2 RXv2コア

識別名は以下のファイルで定義される。

 include/sys/sysdepend/iote_rx231/machine.h

1.4. 関連ドキュメント

以下に関連するドキュメントを記す。

分類 名称 発行
OS μT-Kernel 3.0仕様書(Ver.3.00.01)
TEF020-S004-03.00.01
TRONフォーラム
OS μT-Kernel3.0共通実装仕様書(Ver.2.00.00)
TEF033-W002-2304xx
TRONフォーラム
T-Monitor T-Monitor仕様書
TEF020-S002-01.00.01
トロンフォーラム
デバイスドライバ μT-Kernel 3.0 デバイスドライバ説明書(Ver.1.00.05)
TEF033-W007-221007
トロンフォーラム
実機 UCT RX231 IoT-Engine取扱説明書 UCテクノロジー
搭載マイコン RX230グループ、RX231グループ ユーザーズマニュアル ハードウェア編 ルネサス エレクトロニクス

1.5. ソースコード構成

機種依存定義sysdependディレクトリ下の本実装のディレクトリ構成を以下に示す。名称に(*)の点いたディレクトリが本実装の対象である。

─ sysdepend         ハードウェア依存部
├ iote_rx231             RX231 Iot-Engine依存部 (*)
├       :
├ <ターゲットn>          ターゲットn 依存部
└ cpu                    CPU依存部
   ├ rx231                         RX231マイコン依存部 (*)
   ├     :
   └ <CPUn>                        CPUn依存部
   └ core                          コア依存部
          ├ rxv2                        RXv2コア依存部
          ├    :
          └ <core n>                    コアn依存部

「RXv2コア依存部」は、RXv2コアに共通するコードであり、他の共通のコアを有するマイコンでも使用される。 「RX231マイコン依存部」は、前述のコア依存部以外の本マイコンに固有のコードである。 「RX231 IoT-Engine依存部」は、前述のコア依存部およびマイコン依存部以外のRX231 IoT-Enginのハードウェアに固有のコードである。

2. 基本実装仕様

2.1. マイコン関連

2.1.1. 対象マイコン

実装対象のマイコンの基本的な仕様を以下に記す。

項目 内容
CPUコア RXv2
ROM 512KB(内蔵フラッシュROM)
RAM 64KB(内蔵RAM)

2.1.2. 実行モードと保護レベル

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.1.3. CPUレジスタ

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.1.4. 低消費電力モードと省電力機能

省電力機能はサポートしていない。プロファイルTK_SUPPORT_LOWPOWERはFALSEである。よって、マイコンの低消費電力モードに対応する機能は持たない。

省電力機能のAPI(low_pow、off_pow)は、/kernel/sysdepend/iote_rx231/power.cに空関数として記述されている。なお、本関数に適切な省電力処理を記述し、プロファイルTK_SUPPORT_LOWPOWERをTRUEに指定すれば、OSの省電力機能(tk_set_pow)は使用可能となる。

2.1.5. コプロセッサ対応

本マイコンはFPUおよびDSPの機能を有する。コンフィギュレーションUSE_FPUおよびUSE_DSPにより、OSのコプロセッサ対応機能を有効とすることができる。FPUやDSPが有効の場合、コプロセッサレジスタ操作APIが使用可能となる。 詳細はRXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.2. メモリ関連

2.2.1. メモリモデル

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.2.2. マイコンのアドレス・マップ

マイコンのアドレス・マップは、シングルチップモードまたは内蔵ROM有効拡張モードとする。 以下にマイコンのアドレス・マップを記す。なお、リザーブ領域は記載しない(詳細はマイコンの仕様書を参照のこと)。

アドレス
(上段:開始
下段:終了)
種別 サイズ
(KByte)
備考
0x0000 0000
0x0000 FFFF
内蔵RAM 64  
0x0008 0000
0x000F FFFF
周辺I/Oレジスタ    
0x0010 0000
0x0010 1FFF
内蔵ROM   E2データフラッシュ
0x007F C000
0x007F C4FF
周辺I/Oレジスタ    
0x007F FC00
0x007F FFFF
周辺I/Oレジスタ    
0x0500 0000
0x07FF FFFF
外部アドレス空間
(CS領域)
  シングルチップモードではリザーブ領域
0xFFF8 0000
0xFFFF FFFF
内蔵ROM 512 プログラムROM

2.2.3. OSのメモリマップ

本実装では、マイコンの内蔵ROMおよび内蔵RAMを使用する。 OSを含む全てのプログラムのコードは内蔵ROMに配置され、実行される。 リセットベクタおよび例外ベクタテーブルは内蔵ROM上に配置される。 割込みベクタテーブルおよび割込みの高級言語ハンドラテーブルは、リセット時は内蔵ROM上にあるが、OSの初期化処理にてRAM上に再配置される。ただし、コンフィグレーションUSE_STATIC_IVTを有効にすることにより、RAM上への再配置を禁止することができる(初期値は無効)。再配置を禁止した場合、APIによる割込みハンドラの登録が不可となる。

以下に内蔵ROMおよび内蔵RAMのメモリマップを示す。表中でアドレスに「-」が記載された箇所はデータのサイズによりC言語の処理系にてアドレスが決定され、OS内ではアドレスの指定は行っていない。

(1) 内蔵ROMのメモリマップ

アドレス
(上段:開始
下段:終了)
種別 内容  
0xFFF8 0000
-
プログラムコード プログラムコードが配置される領域  
-
-
割込みベクタテーブル 割込みのベクタテーブル
リセット時のみ有効
-
-
割込み高級言語ハンドラテーブル 割込みの高級言語ハンドラの登録テーブル
リセット時のみ有効
 
-
-
定数データ C言語の定数データなどが配置される領域  
0xFFFF FF80
-
例外ベクタテーブル 例外のベクタテーブル
リセット時のみ有効
 
0xFFFF FFFC
0xFFFF FFFF リセットベクタ  

(2) 内蔵RAMのメモリマップ

アドレス
(上段:開始
下段:終了)
種別 内容
0x0000 0000
-
割込みベクタテーブル 割込みのベクタテーブル
OSの初期化後に有効
-
-
割込み高級言語ハンドラテーブル 割込みの高級言語ハンドラの登録テーブル
OSの初期化後に有効
-
-
プログラムデータ C言語の変数等が配置される領域
-
-
OS管理領域 OS内部の動的メモリ管理の領域
-
0x0000 FFFF
例外スタック領域 例外および割込みハンドラにて使用されるスタック

2.2.4. スタック

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.2.5. OS内の動的メモリ管理

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.3. 割込みおよび例外関係

2.3.1. マイコンの割込みおよび例外

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.3.2. 割込み関連定義

本マイコンのハードウェアに関わる割込み関連の定義を以下に記す。項目はRXv2コアにおいて共通である。RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

名称 意味
N_INTVEC0 256 グループ割込み以外の割込み数(※)
N_INTVEC 256 すべての割込み数
INTPRI_MIN_INT_PRI 1 割込みの最低優先度
INTPRI_MAX_INT_PRI 15 割込みの最高優先度

(※)本マイコンにはグループ割込みは存在しないのでN_INTVECと同じになる

以上の定義は以下のファイルで記述される。

 /include/sys/sysdepend/cpu/rx231/sysdef.h

2.3.3. ベクタテーブル

本マイコンは、例外ベクタテーブルと割込みベクタテーブルを有する(各テーブルの具体的な仕様はマイコンのユーザマニュアルを参照のこと)。 また、OS内の割込みハンドラ管理用にHLL割込みハンドラテーブルが存在する。

(1) 例外ベクタテーブル RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

(2) 割込みベクタテーブル 割込みベクタテーブルは、割込みおよび無条件トラップの割込みハンドラのアドレスが設定される。 リセット時の割込みベクタテーブルは、以下のファイルにknl_int_vect_romとして定義される。

kernel/sysdepend/cpu/rx231/intvect_tbl.c

OSの初期化処理において、ROM上のベクタテーブルはRAM上にコピーされ、以降そちらが使用される。RXv2向け実装仕様書を参照のこと。 ただし、コンフィグレーションUSE_STATIC_IVTが1に設定されている場合は、ROM上のベクターテーブルが使用され続ける。USE_STATIC_IVTの初期値は0である。

(3) HLL割込みハンドラテーブル TA_HLANG属性の割込みハンドラ(高級言語(C言語)で記述された割込みハンドラ)は、OS内の高級言語対応ルーチンを経由して呼び出される。TA_HLANG属性の割込みハンドラの実行アドレスは、HLL割込みハンドラテーブルに登録される。 リセット時のHLL割込みハンドラテーブルは、以下のファイルにknl_hll_inthdr_romとして定義される。

kernel/sysdepend/cpu/rx231/hllint_tbl.c

OSの初期化処理において、ROM上のHLL割込みハンドラテーブルはRAM上にコピーされ、以降そちらが使用される。RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.3.3.1. 割込み優先度

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.3.4. OS内部で使用する割込み

OSの内部で使用する割込みには、以下のようにマイコンの割込みまたは例外が割り当てられる。該当する割込みまたは例外は、OS以外で使用してはならない。

種類 割込み番号 割り当てられる割込み・例外 優先度
システムタイマ割込み 28 CMI0 15

本実装ではディスパッチ要求および強制ディスパッチ要求には割込みを使用しない。

各割込み・例外の割り当ては以下のファイルで定義される。

/include/sys/sysdepend/cpu/rx231/sysdef.h ``` #define INTNO_SYS_DISPATCH  1       /* Dispatch (reserved)*/	 #define INTNO_SYS_SVC       2       /* System call (reserved) */ #define INTNO_SYS_RET_INT   3       /* System call : tk_ret_int (reserved) */ #define INTNO_SYS_DGSPT     4       /* Debugger support (reserved) */ #define INTNO_SYS_TICK      28      /* System Timer tick */ ``` システムタイマ割込み(INTNO_SYS_TICK)以外は将来のための予約である。

システムタイマ割込みは最高優先度が設定される。他の割込みは、この割込み優先度の間の優先度を使用しなければならない。 システムタイマ割込みの優先度は以下のファイルで定義される。

/include/sys/sysdepend/cpu/rx231/sysdef.h ```
#define INTLEVEL_SYS_TICK   15 ```

2.3.5. 多重割込み対応

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.3.6. クリティカルセクション

最高割込み優先度INTPRI_MAX_EXTINT_PRIは、本OSが管理する割込みの最高の割込み優先度であり、以下のファイルで定義される。詳細はRXv2向け実装仕様書を参照のこと。

include/sys/sysdepend/cpu/rx231/sysdef.h ``` #define	INTPRI_MAX_INT_PRI	15 ```

2.3.7. μT-Kenrel/OSの割込み管理機能

本マイコン固有の実装仕様を以降に記す。共通仕様はRXv2向け実装仕様書を参照のこと。

  • 割込み番号 本マイコンはグループ割込みをもたない。 割込み番号の割当ては以下となる。
割込み番号 対応する割込み
0 ~ 255 ベクタ番号0 ~ ベクタ番号255

2.3.8. μT-Kernel/SMの割込み管理機能

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.3.9. OS管理外割込み

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

2.3.10. その他の例外

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

3. システムの起動

3.1. 起動処理

3.1.1. リセットハンドラ

リセットハンドラはRXv2向け実装仕様書を参照のこと。 リセットハンドラから呼ばれるknl_startup_hw関数により本システムに固有の処理が実行される。 knl_startup_hw関数は以下のファイルに定義される。

 kernel/sysdepend/iote_rx231/hw_setting.c

knl_startup_hw関数では以下の処理が実行される。ユーザは必要に応じてknl_startup_hw関数の内容を変更してよい。

(1) 周辺モジュールのセットアップ 使用する周辺モジュールのモジュールストップを解除し使用可能とする。 設定はmstop_tblテーブルの内容に従い実行する。 mstop_tblテーブルの要素は以下の構造体であり、レジスタのアドレスと設定値を示す。テーブルの内容を変更することにより設定を変えることができる。

typedef struct {
	UW	addr;
	UW	data;
} T_SETUP_REG;

初期値では以下の周辺モジュールのモジュールストップを解除する。

● コンフィギュレーションUSE_SDEV_DRVが無効(0)の場合

周辺モジュール名 用途
DMAC/DTC  
CMT0 システムタイマ
TMR0 ~ 3 物理タイマ
SCI6 デバッグ用シリアル入出力(T-Monitor)

● コンフィギュレーションUSE_SDEV_DRVが有効(1)の場合

周辺モジュール名 用途
DMAC/DTC  
CMT0 ~ 1  
TMR0 ~ 3 物理タイマ
SCI6 デバッグ用シリアル入出力(T-Monitor)
RII0 デバイスドライバ(I2C)
S12ADE デバイスドライバ(A/DC)

(2) I/O端子の設定 各I/O端子の機能設定を行う。 設定はpinfnc_tblテーブルおよびpinmode_tblテーブルの内容に従い実行する。 各テーブルの要素は前述のT_SETUP_REG構造体である。テーブルの内容を変更することにより、I/O端子の設定を変えることができる。

初期値では以下の端子の機能が設定されている。

● コンフィギュレーションUSE_SDEV_DRVが無効(0)の場合

I/Oポート名 機能名 用途
PB0 SCI6.RXD6 デバッグ用シリアル入出力(T-Monitor)
PB1 SCI6.TXD6 同上

● コンフィギュレーションUSE_SDEV_DRVが有効(1)の場合

I/Oポート名 機能名 用途
P16 RII0.SCL0 デバイスドライバ(I2C)
P17 RII0.SDA0 同上
P40 AN000 デバイスドライバ(A/DC)
P41 AN001 同上
P42 AN002 同上
PB0 SCI6.RXD6 デバッグ用シリアル入出力(T-Monitor)
PB1 SCI6.TXD6 同上

(3) CPUクロックの設定 CPUクロックの設定は以下のファイルのstartup_clock関数で行っている。

kernel/sysdepend/iote_rx231/cpu_clock.c

本実装では以下の設定となる。

項目 備考
システムクロック ICLK 54MHz  
周辺モジュールクロック PCLKA 54MHz MTU2用
周辺モジュールクロック PCLKB 27MHz MTU2,S12AD以外
周辺モジュールクロック PCLKD 54MHz S12AD用
Flash I/Fクロック FCLK 1.6875MHz  
USBクロック UCLK 48MHz  

クロックの値は以下のファイルで定義されている。

include/sys/sysdepend/cpu/rx231/sysdef.h
#define	SYSCLK_ICLK     (UW)(54*MHz)
#define	SYSCLK_PCLKA    (UW)(54*MHz)
#define	SYSCLK_PCLKB    (UW)(27*MHz)
#define	SYSCLK_PCLKD    (UW)(54*MHz)

なお、クロックの初期設定は原則として変更してはならない。もし変更した場合は、OSのクロック制御やデバイスドライバの制御にも影響がある場合があるため、合わせてプログラムの変更を行わなくてはならない。

3.1.2. OS初期化処理

OS初期化処理は共通部のmain関数で実行される。共通実装仕様書を参照のこと。 main関数から以下の対象システムに依存する処理が実行される。

(1) デバイスの初期化 knl_init_device main関数より呼び出され、デバイスドライバの登録に先立ち、必要なハードウェアの初期化を行う。 デバイスの初期化は以下のファイルにknl_init_device関数として実装される。

kernel/sysdepend/iote_rx231/devinit.c

なお、本実装ではknl_init_device関数内の処理は記述されてないので、ユーザは必要に応じてknl_init_device関数に処理を記述すること。

3.2. 初期タスク

3.2.1. 初期タスクの処理

初期タスクの処理は共通部のinit_task_main関数で実行される。共通実装仕様書を参照のこと。 init_task_main関数から以下の対象システムに依存する処理が実行される。

(1) デバイスの実行(knl_start_device) デバイスドライバの登録、実行を行う。本処理は以下のファイルにknl_start_device関数として定義される。

 kernel/sysdepend/iote_rx231/devinit.c

コンフィギュレーションUSE_SDEV_DRVが有効(1)の場合、以下の基本的なデバイスドライバが登録される。

デバイス名 機能
serd シリアル通信(SCI6)
iica I2C通信(RIIC0)
adca A/Dコンバータ(S12SDE)

コンフィギュレーションUSE_SDEV_DRVが無効(0)の場合、デバイスドライバの登録は行われない(初期値は無効(0))。

ユーザが使用するデバイスドライバを変更する場合は、必要に応じて上記の関数の処理を変更する必要がある。

4. システムの終了と再起動

4.1. 終了処理と再起動処理

終了処理と再起動処理は共通部のshutdown_system関数で実行される。shutdown_system関数からハードウェアに依存する処理が呼び出される。 対象ハードウェアに依存する処理のうち、本マイコンに依存する処理を記す。RXv2コアに依存する処理は、RXv2コア向け実装仕様書を参照のこと。

(1) デバイスの終了処理 knl_finish_device knl_start_deviceと対となるデバイスの終了処理を実行する。 knl_finish_device関数は以下のファイルに定義される。

 kernel/sysdepend/iote_rx231/devinit.c

なお、本実装ではknl_finish_device関数内の処理は記述されてないので、ユーザは必要に応じてknl_finish_device関数に処理を記述すること。

(2) ハードウェア停止処理(knl_shutdown_hw) ハードウェアをすべて停止し、マイコンを終了状態とする。本関数の処理でシステムは終了する。 knl_shutdown_hw関数は以下のファイルに定義される。

 kernel/sysdepend/iote_rx231/hw_setting.c

なお、本実装では割込みを無効とし無限ループを行っている。ユーザは必要に応じてknl_shutdown_hw関数の内容を変更してよい。

(2) ハードウェア再起動(knl_restart_hw) ハードウェアの再起動処理を行う。knl_restart_hw関数は以下のファイルに定義される。

 kernel/sysdepend/iote_rx231/hw_setting.c

なお、本実装では再起動には対応していないので、処理のひな型のみを記述している。knl_restart_hw関数はエラーを返して終了し、システムは終了するようになっている。ユーザは必要に応じて、knl_restart_hw関数に再起動処理を記述すること。

5. タスク

本マイコンに依存するタスクの仕様を以下に記す。

5.1. タスク属性

タスク属性のハードウェア依存仕様を以下に示す。

属性 可否 説明
TA_COP0 FPU(TA_FPUと同じ)
TA_COP1 × DSP
TA_COP2 × 対応無し
TA_COP3 × 対応無し
TA_FPU FPU(TA_COP0と同じ)

5.2. タスクの処理ルーチン

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

5.3. タスク・コンテキスト情報

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

6. 時間管理機能

6.1. システムタイマ

RXv2向け実装仕様書を参照のこと。

6.2. タイムイベントハンドラ

タイムイベントハンドラの実行中の割込みマスクレベルは、タイムイベントハンドラ割込みレベルTIMER_INTLEVELに設定される。TIMER_INTLEVELは、以下のファイルで定義される。

include/sys/sysdepend/cpu/rx231/sysdef.h

本実装では初期値は以下のように0(すべての割込みを許可)が設定されている。

#define TIMER_INTLEVEL	0   //すべての割込みを許可

7. その他の実装仕様

7.1. 物理タイマ機能

7.1.1. 使用するハードウェアタイマ

マイコン内蔵の8ビットタイマ(TMR)を16ビットカウントモードで使用して物理タイマが実装される。 8ビットタイマは4チャンネルが存在する。そのうちTMR0とTMR1、TMR2とTMR3の組み合わせで16ビットカウントモードとし、物理タイマ番号が1から割り当てられる。

物理タイマ番号 対応するタイマ ビット幅
1 TMR0、TMR1 16
2 TMR2、TMR3 16

TMRは物理タイマ以外の用途にも使用可能である。その場合は物理タイマAPIを呼び出さなければよい(API StartPhysicalTimerにてTMRは物理タイマに初期化される)。

7.1.2. タイマの設定

物理タイマのクロック設定は、以下のファイルで定義される。

include/sys/sysdepend/cpu/rx231/sysdef.h
#define TMR01_CLOCK		(0x08)		// Count PCLK
#define TMR23_CLOCK		(0x08)		// Count PCLK

この値は、TMRのTCCRレジスタのCKSビットに設定される。上記の設定を変更することにより、各物理タイマのクロックを変更できる。 本実装の初期値では、タイマクロックの周波数はPCLK(27MHz)と同じである。

7.1.3. タイマ割込み

物理タイマはその内部処理において、各TMRBのコンペアマッチ割込み(CMIA)およびオーバーフロー割込み(OVI)を使用する。

物理タイマ番号 対応する割込み 割込み番号
1 CMIA0 174
1 OVI0 176
2 CMIA2 180
2 OVIA2 182

各割込みの優先度は以下のファイルに定義される。割込み優先度は必要に応じて変更可能である。

include/sys/sysdepend/cpu/rx231/sysdef.h
#define INTPRI_TMR01		5	// 物理タイマ1
#define INTPRI_TMR23		5	// 物理タイマ2

7.2. T-Monitor互換ライブラリ

7.2.1. コンソール入出力

T-Monitor互換ライブラリのAPIによるコンソール入出力の仕様を以下に示す。

項目 内容
デバイス シリアルコミュニケーションインタフェース(SCI) Channel 6
ボーレート 115200bps
データ形式 data 8bit, stop 1bit, no parity

8. 変更履歴

版数 日付 内容  
2.00.00 2023.12.01 ・内容および構成の全面見直  
1.00.09 2022.10.14 ・誤字修正  
1.00.08 2022.10.07 ・μT-Kernelおよび関連仕様書バージョン更新
・5.1リセット処理 (2)ベクタテーブルの移動
誤記修正 (誤) USE_NOINIT (正)USE_STATIC_IVT
 
1.00.07 20022.06.30 ・5.2 ハードウェアの初期化および終了処理
cpu_clock.cファイルのパス変更
1.00.06 2021.11.15 ・1.4 関連ドキュメント バージョン番号等を更新
・誤記修正 (正)RNG (誤)RING
 
1.00.05 2021.03.31 ・1.4 関連ドキュメント バージョン番号等を更新  
1.00.04 2020.12.09 ・1.4 関連ドキュメント バージョン番号等を更新
・1.5 ソースコード構成 説明の追加
・ 2.5 コプロセッサ対応
一部説明を「8.1 コプロセッサ関連」に移動
・5.2 ハードウェアの初期化および終了処理
コンフィギュレーションUSE_SDEV_DRVによるハードウェアの初期化の説明を追加
・5.3 デバイスドライバの実行および終了
コンフィギュレーションUSE_SDEV_DRVによるデバイスドライバの初期化の説明を追加
・6 タスク および、7時間管理
「6.その他の実装仕様」から独立した章に変更
・8.1 コプロセッサ関連 新規追加
 
1.00.03 2020.10.21 ・1.4 関連ドキュメント バージョン番号等を更新
・5.2ハードウェアの初期化および終了処理
ハードウェアの初期設定の処理について説明を追記
・6.3.2 タイマの設定
物理タイマのクロック設定について説明を追記
 
1.00.02 2020.07.13 ・6.3 物理タイマ機能 新規  
1.00.01 2020.05.29 ・1.4 関連ドキュメント バージョン番号等を更新
4.4 OS内部で使用する割込み 説明の追加
 
1.00.00 2020.03.13 ・初版  

以上